窒素等の循環的利活用研究プロジェクト
R&D Project of Nitrogen Utilization

大気中の窒素から省資源・省エネルギーな方法でアンモニアを合成します。さらに、低窒素肥料での植物生産の増加を目指します。

作物の栽培には、大量の肥料が使用されています。肥料の原料となるアンモニアは、大気中の窒素から「ハーバー・ボッシュ法」によってつくられています。ハーバー・ボッシュ法は高温高圧下で反応を行うため、大量の化石燃料を必要とします。アンモニアの生産に、世界全体の1%以上のエネルギーが使われているといわれるほどです。窒素プロジェクトでは、高温高圧という極端な条件を必要としない、省資源・省エネルギー的な方法で窒素固定、アンモニア合成を実現する革新的な触媒の開発を目指します。また、窒素やリンが少ない栄養状態の悪い環境でも植物の生育を可能にする遺伝子や生理活性物質を探索し、それを制御することで少ない肥料(ローインプット)でもたくさんの収穫を可能にする植物を生み出すことを目指します。また、脱窒阻害剤の開発も大きな目標です。肥料に含まれる硝酸イオン(NO3-)は脱窒という過程を経て亜酸化窒素(N2O)として大気中に放出されます。亜酸化窒素は二酸化炭素の300倍の温室効果作用を持つと言われています。亜酸化窒素の放出を抑制する技術の開発が求められているのです。

窒素等の循環的利活用研究プロジェクト

これまで不可能だった物質合成を、化学と生物学の力で可能にします。

白須 賢

プロジェクトリーダー

白須 賢 Ken Shirasu

Ph.D.

大気の約80%は窒素です。その豊富な資源を利用しない手はありません。しかし、窒素は、原子が三重結合によって結び付いた、とても安定な分子です。窒素からアンモニアなどの化合物を合成するには、その強い結合を切り、水素など別な原子と結び付ける必要があります。それはとても難しく、膨大なエネルギーや何段階もの複雑な反応が必要になります。これまで不可能とされていた反応を行い、大気中の窒素から省エネルギーかつ直接に有用な物質をつくる出すこと。それが、窒素プロジェクトの大きな目標です。私の専門である触媒化学の究極の目標は、原子と原子の結合を好きなところで切り、好きなところでつなげることです。常温常圧で窒素と水素からアンモニアを合成できる触媒技術や、窒素から直接有機物を合成できる化学技術の開発を進めていきます。一方、マメ科植物の根に共生する根粒菌など、窒素からアンモニアをつくり出す生物がいます。生物から学ぶこともたくさんあるでしょう。化学は分子レベルで考える学問であり、生物学は全体での情報の流れを考えます。考え方も手法も異なる分野の研究者が、同じ研究センターで同じ目標に向かって取り組むことで、予想もしなかった画期的な成果が生まれることが期待できます。