カリキンが植物の乾燥耐性を⾼めることを発⾒

2018年1⽉4⽇

理研 環境資源科学研究センターは、植物が燃焼した際の煙等に含まれる成⻑調節物質であるカリキン(KAR)が、植物の乾燥応答に影響を与えることを発⾒しました。

植物が乾燥ストレスにさらされると、アブシジン酸(ABA)が合成され防御反応を誘導します。また、これまでの研究で、MORE AXILLARY GROWTH2(MAX2)と呼ばれるタンパク質が、植物の乾燥耐性を⾼める働きがあることも分かっています。MAX2は、植物の枝分かれを制御することで知られるストリゴラクトンおよびKARシグナル伝達経路の重要な調節因⼦です。ストリゴラクトン類似体を投与すると植物の乾燥応答が増強することから、ストリゴラクトンシグナル伝達が乾燥応答を調節していると考えられる⼀⽅、KARシグナル伝達経路が、乾燥に対してどのように寄与しているのかは解明されていませんでした。

研究チームは、KARの受容体であるKAR Insensitive 2(KAI2)を⽋損させたモデル植物シロイヌナズナ変異体が強い乾燥感受性を⽰すことを明らかにしました。またこの感受性上昇メカニズムは、葉の防⽔機構の⽋乏、気孔開⼝部の拡⼤、アントシアニン量の低下によるものでした。植物が⽔不⾜の環境に適応するためには、正常なKARシグナル伝達を必要とすることを⽰しています。

本研究の成果により、KAI2受容体機能の喪失が、植物の乾燥応答を妨げることが分かりました。今後、KARシグナル伝達を操作することで作物の乾燥耐性を向上することができ、持続可能な農業のための有望なツールになると期待できます。

本研究は、⽶国のオープンアクセス科学雑誌『PloS Genetics』(11⽉13⽇付け)に掲載され、⽶国の科学雑誌『Science』(12⽉8⽇付け)のEditors' Choiceに選ばれました。

原論⽂情報
PloS Genetics doi: 10.1371/journal.pgen.1007076
W. Li, K. H.Nguyen, H. D. Chu, C. V. Ha, Y. Watanabe, Y. Osakabe, M. A. Leyva-González, M. Sato, K. Toyooka, L. Voges, M. Tanaka, M. G. Mostofa, M. Seki, M. Seo, S. Yamaguchi, D. C. Nelson, C. Tian, L. Herrera-Estrella, L.-S. P. Tran,
"The karrikin receptor KAI2 promotes drought resistance in Arabidopsis thaliana".
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発現調節研究ユニット
Lam-Son Phan Tran(ユニットリーダー)
Weiqiang Li(研究員)
渡邊 泰⼦(テクニカルスタッフ)